さて、以下の素材を模写することにします。左脳で描くとどうなるでしょう。
なお、模写練習に手ごろな素材に書いたように、実世界を描くというのは難度がひとつ上がります。なので、模写素材としてはあまり適当ではないのですが、失敗が分かりやすいためここでは採用しました。
左脳は、目から入る情報を論理的に組み立てる能力を持っています。その影響力は非常に強力で、しかも自動的かつ無意識に行われます。あなたも、恐らく上の素材を見て 1秒以内に以下のことを理解したのではないでしょうか。
一枚の画像を一瞬見ただけでここまで判断できる。このことは左脳が素晴らしい論理力を持っているという証明でもあります。しかし、そんな左脳に鉛筆を握らせたらどうなるのでしょうか。
左脳にとって正しい秩序で行われたはずの模写が、なんでこんなに稚拙に見えるものになるのだろう。その最大の要因は、それが現実とは大幅に異なっているから、です。
少しだけ事実を見てみましょう。ここでは、一点「同じ地面に接地しているのだから、4本の足の高さは一緒」についてだけ、冷静に事実を見てみようと思います。
どうでしょうか。最も長い足(手前の足)と最も短い足(奥の足)とでは、長さに 2倍くらいの違いがありますよね。4本の足の高さがこれほど異なっていると認識できていたでしょうか。左脳による情報の再構成は、これほど違いをあるものを、論理的に「同じものだ」と判断できるほど高性能なのです。
ただ、模写には逆効果になってしまうんだ。
次ページでは、いよいよ右脳による模写を実施します。ただ、左脳の影響力は非常に強力で、それも自動的かつ無意識に行われるものなので、これを排除するために 2つのちょっとした仕掛けを組み入れてみます。