再帰関数とは、自分自身を呼び出す関数のことです。Javaでは関数はメソッドと呼ばれます。なので、自分自身を呼び出すメソッドということになります。再帰関数は、理解するのが難しい上に、あまり使用頻度も高くありません。ところが、再帰関数の仕組みを利用するとプログラムをシンプルに記述できることがときどきありますので、理解しておくに越したことはありません。
なお、ここまでの解説の中で、既に 1つだけ再帰関数のプログラムを製作したことがあります。それは G106.javaです。ただ、このプログラムは異常終了してしまいました。ここでは、上手く動作する再帰関数のプログラムを製作していきます。
ところで、高校数学を学習した方ならば、漸化式というのを覚えているでしょうか。具体的には以下のような形式のものです。
上の漸化式は、等比数列と呼ばれていました。Javaでは、再帰関数を用いることで、このような漸化式を使った計算ができるようになります。
あるメソッドが自分自身を 1回だけ呼ぶ関数を、僕は分岐しない再帰関数と呼んでいます。理解することがなかなか大変である再帰関数の中で、最もシンプルな形ということでもあります。
多分、一般論を説明するよりも、具体的な例を見たほうが早いと思います。さっそくサンプルプログラムを作っていきます。
階乗を求めるプログラムは G102.javaで作成済みです。このプログラムとまったく同じ動作をするプログラムを、再帰関数を利用して実現してみることにします。
仕様を以下に定めます。
なお、階乗を求める再帰関数を漸化式のように表現すると、以下のようになります。
1つめの意味は、例えば、「5の階乗は、5 × (4の階乗の値)である」ということです。
さっそく、この仕様を満たすプログラムを製作します。
G401/G401.java
/** * 1~10の階乗を表示します(再帰関数を使用)。 */ public class G401 { /** * メインメソッド。 * @param args 引数 */ public static void main(String[] args) { for(int i = 1; i <= 10; i ++) { long value = G401.factorial(i); System.out.println(i + "の階乗は " + value); } } /** * 指定した数の階乗を求めます。なお、0以下の値を指定した場合は Errorになります、注意。 * @param number 数 * @return 階乗の値 */ private static long factorial(int number) { if(number == 1) { return 1L; } else { return number * G401.factorial(number - 1); } } }
実行結果は以下の通り。
1の階乗は 1 2の階乗は 2 3の階乗は 6 4の階乗は 24 5の階乗は 120 6の階乗は 720 7の階乗は 5040 8の階乗は 40320 9の階乗は 362880 10の階乗は 3628800
メソッド factorialに漸化式の要素が組み込まれていることが理解できるでしょうか。factorialメソッドの実行中に、畳み掛けるように自分自身のメソッドを呼び出している(例えば 5の階乗の計算では、五重に呼び出される)ことが分かるでしょうか。
また、G102.javaと比較すると、factorialメソッドの中の for文が無くなったことが分かるでしょうか。再帰関数では、自分自身を呼び出すことで、結果的に for文や while文などの繰り返し構造が減少することが多いです。
平方根の近似値を、再帰関数を利用して実現してみます。
このプログラムは以下のように動作します。
さっそく、この仕様を満たすプログラムを製作します。
G402/G402.java
/** * 平方根の近似値を表示します(再帰関数を用いて)。 */ public class G402 { /** * メインメソッド。 * @param args 引数 */ public static void main(String[] args) { double number = MySystem.in.getDouble("正の数字を入力してください"); int count = MySystem.in.getInt("探索回数を入力してください"); if(number < 0.0) { System.out.println("負の数が入力されました。"); } else { double sqrt = G402.sqrt(number, 0, number, count); System.out.println(number + "の平方根の近似値は " + sqrt + "です。"); } } /** * 再帰的に平方根を求めます。 * @param number 元の数 * @param a 下の値 * @param b 上の値 * @param count カウンタ */ private static double sqrt(double number, double a, double b, int count) { double c = (a + b) / 2.0; double c2 = c * c; if(count == 0) { // System.out.println("探索終了"); return c; } else if(c2 == number) { return c; } else if(c2 > number) { // System.out.println(number + "の平方根は " + a + "と " + c + "の間です。"); return G402.sqrt(number, a, c, count - 1); } else { // System.out.println(number + "の平方根は " + c + "と " + b + "の間です。"); return G402.sqrt(number, c, b, count - 1); } } }
実行結果の例は以下の通り。
正の数字を入力してください? 2 探索回数を入力してください? 3 2.0の平方根の近似値は 1.375です。
正の数字を入力してください? 49 探索回数を入力してください? 8 49.0の平方根の近似値は 6.986328125です。
コメントアウトしてある部分を出力するようにすると、動きがよく分かるかもしれません。
分岐する再帰関数については、配列が絡んでくる場合が多い。ということで、配列を学習した後に改めて説明することにします。